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おかのうえのギリス (大型絵本) 岩波書店
マンロー・リーフ (著), ロバート・ローソン (イラスト), こみや ゆう (翻訳)

by staff on 2011/4/10, 日曜日
おかのうえのギリス (大型絵本) 岩波書店 マンロー・リーフ (著), ロバート・ローソン (イラスト), こみや ゆう (翻訳)  

 この絵本の舞台はスコットランド。だからなのかな、タータンチェック模様の表紙がユニークです。

 この絵本は、アメリカで発売されたのは今から70年以上も前なのですが、日本では去年発売されました。物語を書いたマンロー・リーフ、絵を描いたロバート・ローソンのコンビは、名作「はなのすきなうし」のコンビです。

 黒い細かいペンの線で描かれたリアルなタッチな絵が、ユーモラスなストーリーの味わいを深めていますが、主人公はタイトル通りギリスという少年です。実は、彼の本名は、アラステア・ロデリック・クレイゲラスキー・ ダルハウジー・ガーワン・ダニーブリスル・マックマックという名前でしたが、あまりに長いので周りの人は彼をちびっ子ギリスと呼んでいます。絵を見るとギリスは男の子ですが、タータンチェックのスカートにやはりタータンチェックの大きなストールを胸に巻いています。スコットランドのイメージですね。彼は誰からも愛される少年でしたが、お父さんとお母さんのことで少しやっかいな事情がありました。

 お父さんは山の村で生まれた人です。山の村の人々は鹿狩りをして生計をたてていました。一方、お母さんは谷間の村で生まれました。谷間の村の人たちは毛のモシャモシャした牛を飼って暮らしていました。お父さんお母さんの親戚はそれぞれの村に住んでいます。ギリスは将来どちらかの村で暮らさなければならないのです。

 ところが、谷間の村に住む人たちは、山の村に住むお父さんの親戚のことをバカにしていました。
「山の村の人間は、鹿を追い回しているだけ。野蛮ややつらだ。」
そして、山の村に住む人々はお母さんの村の親戚のことをバカにしていました。
「谷間の村の連中は、毎日ただ牛を野原に放って乳を搾ってるだけだ。」
ギリスはどちらの暮らしの方がいいのか良く分かりませんでしたが、どちらの村の人たちもギリスを可愛がってくれました。

 さて、ある時、ギリスは一年間お母さんの親戚が住む谷間の村で暮らすことになりました。ギリスは毎朝、毛のモシャモシャした牛を草原へ連れていき草を食べさせます。夕方になると牛たちを集めて村へ戻ります。

 大変だったのは、霧の中で牛を呼んでもなかなか集ってくれなかったこと。
「声が小さ過ぎるんだ。もっと大きな声を出さないと。」
と、村の人たちに言われ、ギリスは毎日声を張上げて牛たちを呼びました。そして一年が終わる頃、ギリスはとても大きな声を出せるようになります。ギリスの肺は一息で沢山空気を吸えるようになりました。

 次の年、ギリスは今度はお父さんの出身地である山の村で一年間を過ごすことに。山中を這い回ってギリスは鹿を探しました。ギリスは、時に何時間も岩の上に座って、鹿が現れるのを待ちました。ある時、ギリスはあまりにも長い間座っていたので、「はーー」と大きなため息をついてしまいました。すると、人間の気配に気付いて鹿が逃げてしまいます。お父さんの親戚たちは、「ちびっ子ギリスや、ため息なんかついちゃいかん。長い間息を止めていられるようにならないと。」とアドバイス。ギリスは、それから岩の上に座っている時、草の陰に隠れている時、長く息を止めていられるように練習します。やがてギリスの肺は沢山の空気を溜めておけるようになりました。

 翌年は谷の村で、その翌年は山の村で一年を過ごし、牛を呼ぶ日々、鹿を待ち伏せする日々を繰り返して、彼の肺はだんだん強く大きくなっていきました。

 そして、とうとうギリスがどちらの村で住むか決めなければならない日がやってきます。谷間の村のアンドリューおじさんと山の村のアンダスおじさんが彼を丘へ連れていき、それぞれ、「うちの村へ来ないか」と、ギリスを説得し始めました。しかし、その説得はだんだんケンカごしのようになっていって。。。。

 この後が思いもかけないというか、笑ってしまうような展開になっていきます。大きく強くなったギリスの肺が場をまとめる役目を果たすわけですが、ギリスがおじさんたちに対して、とってつけたように突然いい事を言ったりしないのが、すごくいいなと思いました。スコットランドのある有名な楽器が、めでたしめでたしを導きます。教訓や道徳を無理に盛り込まない、読んで楽しいことを主眼にした絵本です。

 今、震災の被害地の様子をテレビで視て不安な気持ちになっているお子さんもいらっしゃると聞きます。絵本とか物語の世界の中に一時でも浸ることで、気がまぎれるとか、楽になるといいなと思っています。

<参考>

 

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