何故、今、プロジェクト・マネージメントが必要なのか？

関　淑子、付加価値技術研究所代表、MBA
Project Management Specialist, カリフォルニア州建築総合請負業者

東日本大震災は未曾有の規模の自然災害だったために、影響も未曾有の規模の広がりを見せています。日本ばかりではなく、世界中で大自然災害が頻発しているだけでなく、新型インフルエンザのような疫病も多発しています。

このように大災害が多くなってくると、ビジネスの前提条件を根本的に考え直して、対策を取る必要があります。今回の大震災の影響で関西や九州などの企業の倒産も起こっているのを見ると、様々な要因が互いにどのように影響しあうのかを全体として理解することが極めて大切でしょう。

(Project Management)、略してPM は大規模建設工事や宇宙開発など大規模で複雑な仕事を成功させるために開発され、発展してきました。既に70年ほどの歴史があり、様々な要因をコントロールして全体として機能させるためのツールも揃っています。

PCの普及と通信網の発達により、PMツールを小規模な仕事にも応用できるようになりましたし、特にリスク管理はPMの大きな柱となっており、現在のように先行きの非常に不透明な時代には、PMはビジネス人には不可欠の能力となってきました。

PMは大きく分けると、
　　　1.　プロジェクトの開始前
　　　2.　プロジェクト計画
　　　3.　プロジェクト実行
　　　4.　プロジェクト終了後
の4フェースになります。

1つのフェースを2回かけて説明したいと思います。分かりやすい例を取り上げ、すぐに役立ちそうな管理シートのサンプルも載せます。ただ読むだけではなく、実際にあなたのプロジェクトに応用してみてください。

それでは、PMの世界にようこそ。

1.　プロジェクトを開始する前に

PMでは開始前のフェースが極めて重要です。このフェースにできるだけ時間と頭を使って下さい。開始前にどれだけ真剣に考えて準備したかどうかで、プロジェクトの成功不成功が殆ど決まってしまいます。

1.1 プロジェクトとは何か？

プロジェクトの定義は幾つかありますが、下記の3条件があてはまる仕事はプロジェクトと考えて良いでしょう：
　　　1)　予算が決まっている
　　　2)　始まりと終わりの日付が決まっている
　　　3)　製品やサービスなどの完成品をつくることが目的

例えば、あなたは商店街の今年の夏祭りに空き店舗を利用した中国茶と中国のお菓子を出すお店を出すことになりました。予算は5万円です。営業は1日だけです。これは予算、始まりと終わり、完成品を作るという3条件を満たしているので、プロジェクトです。

もし、このお店が大成功して、毎日、営業することになったら、終わりが決まっていないので、プロジェクトではありません。ルーティン・ワークとなります。

1.2 プロジェクト・マネージメント(PM)とは何か？

決められた予算で、決められた期間内に、決められた製品を作ったり、サービスを提供することがPMです。PMを成功させるためには、仕事のプロセスを計画し、管理・実行することが必要です。

それではプロセスとは何でしょうか？プロセスとは特定の目的を達成するための一連の作業のことです。

1.3　PMのプロセス

PMのプロセスは、次のような順番で作業が行なわれます：
開始　→　計画　→　管理・実行　→　完了
　　　1)　開始プロセスでは、プロジェクト全体の規模や性質について考え、基本的な実行条件を決めます。
　　　2)　計画プロセスでは、開始プロセスで決めた条件に従って、プロジェクト・プランとプロジェクト・スケジュール
　　　　　を作ります。
　　　3)　管理・実行プロセスでは、プランとスケジュールに従って製品やサービスを作ります。
　　　4)　完了プロセスでは、完成した製品やサービスに対して発注者が満足していることを確認し、残りの雑務を
　　　　　片付けます。

1.4　開始プロセスで決めること：

　　　(1)　ビジョンと目的は何か
　　　(2)　発注者側の責任者は誰か
　　　(3) ステークホルダー（利害関係者）は誰か
　　　(4)　範囲は何処までか
　　　(5)　どんな資源が必要か
　　　(6)　どんなリスクがあるか
　　　(7)　プロジェクト・チームに必要な人間は誰か

次回は、中国喫茶店プロジェクトの開始プロセスで何を行なうかについて具体的に考えてみましょう。

関 淑子さん　プロフィール

関　淑子 付加価値技術研究所代表、MBA Project Management Specialist 事業継続初級管理者 カリフォルニア州建築総合請負業者