Skip to content

書評 「経済再生は現場から始まる」中公新書 山口義行 著

by staff on 2012/10/10, 水曜日
 

 「現場に解あり」の山口先生である。

 「自立とはネットワーク構築力をもつことである」強烈に目に飛び込んできた。「もらえる仕事はたとえ自信がなくとももって帰った。横型ネットワークを活用しながら、どんなに苦労しても、納期は守り、苦労した顔を一切みせず納入したという。それを繰り返していくうちに、お客さんのほうの仲間のネットワークに自分も入れてもらえるようになって、だんだんとお客さんがふえていったんです」事例を紹介しながら、「ネットワーキングとは、まさに自社とともに他者をも活かすことである。」共に生きるがふと頭をかすめる。

 病院はなぜ赤字になるかとの問いかけのなかで「栄養面から患者一人ひとりに合った栄養管理をしていく。患者の体力や免疫力が向上する。」

尾鷹総合病院を例にこれからの病院のあり方を報告する。「腸を通して栄養を吸収することをしていないと、人間の免疫力はどんどん低下していってしまう。」「お年寄りの患者さんたちにとって一番の楽しみは、おいしく食事をすることです。」地域医療全体の変革への発展事例でもある。

 圧巻は前半にある。なぜ資金需要が起きないのかと問いかける。それは貸借対照表だけで評価してきた金融機関の姿勢を問うことにある。資金需要がないのでなく、様々な要因を抱えて、改善できない状態が続き債務超過になっていると借り入れなどできない。常陽銀行や多摩中央信用金庫を例にとりながら金融機関の新しい取り組みを紹介している。

 それはまさに「現場に解あり」なのである。「支店長が徹底的に顧客訪問」「経営改善計画が立てられる会社は支援できる」そして「悪化したB/Sはこれまでの蓄積だから、一朝一夕では解決しない。そこにこだわっているから貸せなくなる。もちもん、企業のもつ不良資産の整理も行うが、問題はP/Lの改善ができるか否かだ。人件費を何%下げれば、仕入れ価格を何%下げれば、債務を一本化すればなど、一つ一つ相談・提案していく。結果としてP/Lが改善すれば、B/Sも改善していく。ひいては債務者区分のランクアップにも繋がる。」

 貸してもらえないのではなく、貸してもらえる努力をしているかという問いかけでもある。簡単なことではない。改善計画が立て、実行できるかは経営者が問われていることでもある。しかし実際に経営者の姿勢が問われ、改善計画をたて融資を新しく受けた事例を私も最近耳にした。

 経営者の姿勢で地域活性化につながる。アドバイサーの姿勢だったりする。一寸した話題がヒントになる。榛名湖でワカサギが激滅した。炭素繊維の話を聞いて榛名湖で実験してもらうことになる。研究者は小島昭さん。話を聞いたのは榛名湖畔でホテルを経営する倉品萬代さん。「ある時、小島氏は、この炭素繊維を汚泥水につけてみた。不思議な現象が見られた。炭素繊維を水の中でジャブジャブやると、その表面が瞬く間にヌメリはじめ、やがてその汚泥が炭素繊維に吸い寄せられ、しっかりとこびりついてしまう。水のなかの汚泥はどんどん減ってゆき、最終的には水が透き通るようになる。」榛名湖のワカサギが復活したのである。

 書評を書いていて、東京の科学技術館での環境国際展に出かけた時のこと、空中の放射能を吸収する炭素繊維の展示に出会った。水の放射能の浄化につながるのではないかと思った。

 山口さんは「市民・企業・行政の新しい関係をつくる」のなかで「環境保全への取り組みや社会貢献活動は、社会にとって良いと言うだけでなく、企業にとってもプラスの効果を生むという共通の認識がなければ、企業として継続が難しい。そのためには、そうしたミッションがどれだけ進んだかということを社内に理解してもらう必要がある。」これは中小企業にもいえることなのだ。「これからの企業のあるべき企業とは、経営者が一市民である企業だと思う」という。

(文:横須賀 健治)

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top