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第6回 「笑顔経営ワークショップ」取材レポート

by staff on 2013/4/10, 水曜日

 

「笑顔経営ワークショップ」を取材した。

 去る3月19日、大変ユニークな経営者向けスクールが関内の「さくらWORKS」で開催された。今月はこのスクール「笑顔経営ワークショップ」をご紹介したい。

 講師は、株式会社バイオクロマト代表木下一真氏(藤沢市本町)。30代の若いイケメン経営者だ。同社は1983年に設立し、木下一真氏が代表に就任したのは数年前。独自の経営手法で売上を伸ばし、各方面から注目を集めている。

 昨年11月に開催された第9回横浜売れるモノづくり研究会セミナーでは講師を務められ、その反響の高さから、今回のスクール開催となった。

第9回横浜売れるモノづくり研究会セミナーのサイト
http://www.monoken.net/seminar/seminar9.html

 


株式会社バイオクロマト
代表 木下一真 氏

「笑顔経営」を実践する木下氏

 現在、株式会社バイオクロマト社は、主に検査機器の製造販売を行なっている。自前の工場を持たないファブレス形体を取るメーカーだ。しかし、驚くのはその取引先。ホームページには、そうそうたる大企業が軒を連ねる。聞けば、製品の開発費は大手企業負担。共同で製品開発及び特許申請を行うものの、製品の販売権はバイオクロマト社の独占だという。

 このような夢のような話が何故実現するのか。それは木下氏のニッチ戦略にある。大手企業の研究機関にとって、研究に必要な機材の開発は開発費を投じて製造することは珍しいことではない。しかし、出来上がった機器は、そもそも販売目的で開発したものではない事に加え、研究に独自性があればあるほど、機材もオーダーメイドに近いものとなるため、利用者も少なく市場規模も小い。つまり大企業にとってはマンパワーを投じてまで参入する価値のない商材ということになる。そのため、大手企業としては販売権を譲渡しても問題がないというわけだ。

 だが、ここで一つ疑問が出てくる。ある意味オーダーメイドに近いような製品の販売権を得ても、商売になるのか?

 それが、商売になっているのだ。いや、商売にしているという方が適切かもしれない。

 「確かに大変ニッチな市場ですが、日本国内はもとより、海外へも営業をかければ、必ずニーズはあります。ニーズのあるところに的確に情報を提供するように仕掛ければ、商品のオファーは必ず得られるのです」と木下氏。

 聞けば、独自に収集した配信先約2万件へ、3日に1回の割合でメルマガを配信しているという。そのメルマガを開封した先を分析し、営業に役立てているのだそうだ。多い時には、1日に200件を超える問い合わせもあるのだとか。また海外へも年に複数回、展示会に参加し、精力的に営業をかけているという。

 さらに「開発の段階で、マーケティングを行い、よりニーズにあった製品の開発に努めていることも、当社の戦略です。」とお話いただいた。

 例えば、同社には大変カラフルな検査機器がラインナップされている。全部で4色そろった小型の濃縮器だ。
http://www.bicr.co.jp/0103/cev1.html

 理系の方なら思い当たる方も多いと思うが、きれいな色のついた機器など、世の中にはほとんどない。実にユニークな商材である。共同開発した企業1社からのオファーであったなら、カラーのラインナップなど決して発想されなかったに違いない。はじめから、国内外の展開を見据え、市場の創造を検討しているからこそ、現場のマーケティング調査を入念に行い、その結果得られた情報をもとに、カラー展開に至っているということだ。木下氏の言葉を借りれば、「需要を生み出す」戦略がここに見て取れる。

 このように木下代表の経営は実にユニークに映る。しかし、その市場性とニーズを端的に捉え、的確で効果的な仕掛け(プロモーション)を実行させる経営手腕(当人曰く「経営の技術」)があってこその結果なのである。

 前置きが長くなったが、この木下社長の経営技術を惜しみなくご教授いただくワークショップが、毎月1回、さくらWORKSで開催されている(詳細は末尾を参照)。

 有料のワークショップであるが、お許しをいただき、先月行われた講座(第2回目)を一部ご紹介させていただく。

まずは前回のおさらい。興味深い内容もりだくさん!

 ワークショップは、木下氏の解説が約15分、その後その内容を反復できるよう、各自でワークを行うスタイルを繰り返して進められていく。木下氏自信、数々のセミナーを受講し勉強を重ねる中、実践につながる(身につく)ものはなかなかないと感じた結果、このような形体を採用したのだそうだ。

 はじめに、前回(1回目)のおさらいがあった。私は前回の講座を受講していないため、簡単なまとめにとどめておきたい。だが、大変興味をそそられる内容で、詳細を聞いてみたくなった。余談だが、ビデオ配信サービスも準備されている。 http://www.monoken.net/egao-keiei/ 都合が悪くスクールに参加できない場合でも安心だ。

  • 売上が下がる等の問題に直面した時、正しい解決策と、間違った無数の解決策がある中、正しい解決策が取れずに失敗するケースがある。
  • 正しい解決策を導き出すための技術があり、方法がある。
  • 正しい解決策とは”問題解決に効果的な解決策”で、問題解決に重要なデータ(上位データ)を見落とさず収集し、的確なアウトプットを早急に行なっていけば、問題解決につながる。
  • 大量のアウト(プロモーション・営業etc.)を行なって初めてイン(情報収集・収益etc.)が得られる。アウトが先!

今回のテーマはVFPの見つけ方。 VFPって何?

 第2回目の今回は、商売の真髄、何を提供していくかに関する内容だ。

 本講座では、本当の意味での提供品を価値ある最終生産物VFP(valuable final product)と呼び、VFPをどのように見つけていくかという事が、今回のテーマになっている。具体的なワークとしては、お客様にとっての価値の見つけ方、自社製品(又はサービス)のどこに価値を感じているのかを、完結な言葉で表記するといった内容となった。

より知ればより売れる

 とかく企業は、その製品やサービスの良さを伝える際、発信者の視点で語りがちだ。「ここがこんなに優れた特許技術なんですよ」とか、「ほかには無いサービスです」などといった具合だ。しかし、利用者にとっては、それはどうでも良い、あるいはそこを重要視してお金を払っているわけではないことが多い。重要なのは、利用者が何を望んで、どこに価値を感じお金を払っているかということだ。その為には、相手を知る事(相手の情報収集)が何よりも大切になる。

 「より話せばより売れるのではなく、より(相手を)知ればより売れる」とパワーポイントに映し出された時には、思わず”なるほど”とうなづいてしまった。

感情に訴えられるかが鍵

 木下氏は「“安い” “早い” “うまい”(=技術・性能・品質etc.)というような論理的利点が当たり前になっているこの時代には、利用者がお金を払うという行動を触発するのは”感情”に訴えられた時だ」と解説した。技術・性能・品質は当たり前で、これにプラスして、人の心に訴えるもの、人の心を揺さぶるものが相手に伝わってはじめて物が売れる時代という訳だ。

 そのため、ワークでは、以下の手順で自社製品やサービスの利点を感情的表現にまで分解して考える作業を行なった。

 まず、これまでお客様からいただいた好意的な声を列記し、論理的か感情的かに分けてみる。次に論理的な意見も全て感情的表現に変換してみる。木下氏いわく、論理的な意見も、ほとんどが感情的なものに置き換えられると言う。例えば「性能が良い」などの論理的な意見を、それは何故かと突き詰めてみると「性能が良いと故障が少ないから面倒がなくて良い」などの理由があぶりだされ、「面倒でない」という感情的な表現に置き換えられるといった具合だ。

 日頃からユーザーの声を収集していない企業にとっては、苦戦する作業となるが、少ない情報源でも構わないからワークをするよう求められた。

 ワークには十分な時間が取られるため、受講者はなんとか情報を絞り出そうと努力する。こんなに自社製品の利点について、ユーザー視点で、しかも感情的表現を考えた人は、なかなかいないだろう。しかし、本当はいの一番にやっていなければいけない事なのだと気づかされた。

 次に、この絞り出された?感情的表現を類似するもの同士まとめて、代表する言葉に分類していく。

 このようなワークを、自社の製品(サービス)をケースにして行っていき、自社のVFPにつながるキーワードをワークショップ内で導いて行くのだ。

 当然、作業をする中、疑問が生じたり、情報不足により、思考が停止してしまい、筆が止まる事がある。しかし、それはむしろこの講座では好機かもしれない。疑問はすぐにその場で講師に質問する事ができるし、情報不足の場合には、その情報(上位情報)は重要であるにもかかわらず、会社で収集していなかった事に気づけるからだ。

ユーザーの声を収集する際のポイント(ヒアリング内容)

  1. なぜ当社の商品やサービスを購入しているのですか?
  2. 購入することによって、何が達成できますか?
    どのような結果になりますか?
    何が得られますか?

「明日から使える」が最大の魅力

VFP検証作業ステップまとめ

Step1:論理的ワードを感情的ワードに変換
Step2:似た言葉をまとめる
Step3:絞った感情を、言った本人にヒアリング
Step4:結果70%以上に支持されればVFPの要素

 これらのワークを行い、そこから自社製品(サービス)のVFPを導きだす方法を解説いただいたところで本講座は終了となった。次回はこれをいかに上手くPRするかがテーマとなるそうだ。

 受講者の一人、竹内氏(公認会計士)は「今回のワークで、自社のVFPに成りうるワードは“安心”と“楽”の2つにしぼられました。本講座では、その場で実践的な気づきが得られことが大きな魅力です」と感想を述べられた。木下氏も「使える講座にしたい」とお話されていたが、自社の新たな気づきや問題点、これからやるべき事など、明日から使える実践的情報が得られることが、本講座の最大の魅力ではないだろうか。

 今回の講座は、マーケティングのSWOT分析やペルソナ設定などの要素が盛り込まれているものの、より実践的な内容となっている印象を受けた。余計なことは排除し、目的に的確に切り込む最短距離を示してくれているとも言えそうだ。

 経営者向けスクールだが、経営企画、マーケティング、プロモーション企画担当者等にもオススメの講座である。

まだ間に合うらしい!

 次回は第3回目となるが、これから参加する事も十分可能とのこと。

 月に1回の講座なので、無理なく参加ができるのではないだろうか。また、講座終了後の懇親会も是非おすすめしたい。木下氏はもちろん、受講されている方々との情報交換も実に有意義だ。

講座情報

講座タイトル 「笑顔経営」ワークショップ
今後の日程予定 第3回 4月16日(火)
第4回 5月21日(火)
第5回 6月18日(火)
第6回 7月23日(火)
第7回以降は日程が決まり次第発表(全10回)
時間 18:30~21:00
料金 5,000円/1講座
場所 さくらWORKS(関内)
お問い合わせ 横浜売れるモノづくり研究会 事務局
〒231-0004
横浜市中区元浜町3-21-2 ヘリオス関内ビル4階
TEL:045-226-3475 (ともクリエーションズ内)

プロフィール

ペンネーム: 津木 雫(つぎ しずく)
オヤジ・オバチャン・オトメのO3マインドを持つ、なんちゃってコラムニスト。
約20年間メーカー勤務。広報・マーケティングを経て、現在フリーランス。
典型的な仕事人間という生活を過ごし、はたと気がつけば人生の折り返し地点。「さぁどうする!」と我が道を振り返っている真最中。
学生時代に、約15カ国を貧乏旅行。
その経験から、今の若者が育つ環境には、問題を自らの力で乗り越える体験が不足していると、感じている。若者教育関連のNPOを立ち上げ、神奈川を中心に現在活動展開中。

 

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