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横浜スケッチ(第29回) 百段階段

by staff on 2017/9/10, 日曜日

ペンネーム 成見 淳

8月は例年に較べとても涼しかった代わりに雨が多かったですね。水害とともに農作物が心配です。さて先月9日より15日まで、横浜そごう9階のギャラリーダダで公募展が行われましたが、搬入の受付の際私の後ろに何と同姓同名の方が並んでいました。主催者作成の案内ハガキに私の本名とペンネームの両方が載っており、2点出品したこともあって主催者が間違ったものとばかり思っていました。
顔なじみの受付の方が「成見さんですね。出品票にお名前と作品名を書いてください。」
「はい、次の方。大澤さんですね。」と言うので思わず「ハイ!」と返事をすると「成見さんは受付済みですのでもう結構です。大澤さん。こちらにお名前を・・・」
その方の出品票を見ると「大澤 淳」。「本当にあなたのお名前ですか? 完璧に同姓同名ですね。」
もし私が本名で出品していたら主催者もさぞ困られたことだろう。本人でさえ予期せぬことだったので後日何人かから「作風がずいぶん変わりましたね。毛の一本一本まで見事な描写力です。」と褒められたが無理もない。でもそんなに急にうまくはならないのに、と苦笑い。私は選外だったが、その方は虎の絵もパンダの絵も見事な描写力で、敢闘賞でした。おめでとうございます。

さて、今月の横浜スケッチは横浜元町の百段階段を取り上げました。

 

それまで百段階段、百段公園のことは知らなかった。初めて聞いたのが今年2017年の3月頃、ちょうど6月の個展会場が決まった後で、近所のかかりつけ医の新村先生からだった。
先生とは私が子供のころからのお付き合いだが、血圧が高くなって薬を飲むようになってからは必ず毎月通っている。先生も血圧が高く、盛んに運動、特に散歩を勧めるだけあって自分でも良く歩く。 本牧から山手を経て鶴見の自宅まで歩くこともあると言う。ただ歩くだけではなく散歩途中の場所の歴史などにも詳しい。「だってせっかく歩くのに、ただ歩くだけではつまらないでしょう?」
母方の親戚に内科医がいるが、総じて医者は知的好奇心が旺盛で、故に博学だと思う。
山手234番館で個展を行うことを話すと、話が弾んで山手から山手百段の話になり、診察が終わった後で神奈川新聞社発行の「横濱」創刊50号「横浜の地図はおもしろい」を頂いた。
私の場合は純粋知的好奇心よりも「横浜スケッチ」を書くという必要に迫れてのことだが、これはお宝、貴重品となる。

家に帰って読み始めると確かに面白い。特に「地図でたどるミステリー」の「中華街はなぜ斜めなのか?」は長い間疑問に思っていたことを一気に納得させてくれた。
夜、中華街で食事&一杯やって、いざ帰ろうとして道に迷ったことはないだろうか? 『確か関内駅はこっちだったよな?』と思って歩いていると石川町駅に行ってしまったなどという経験は? 特に間違えやすいのが善隣門辺りからで、なぜかいつも方向感覚を失うことになる。

この本によると原因は「中華街の道路パターンが隣接街区道路パターンに対して45度ほど傾いていて、周囲のあちこちに五叉路が発生しているから」と記されている。
ではなぜこうなったかを調べてみた。横浜に関する疑問は「ハマレポ」に詳しく、分かりやすく載っていることが多く、いつも参考にさせていただいている。
http://hamarepo.com/story.php?story_id=73
キーは「横浜」という地名と、埋め立てにあった。
山手の尾根全体を縦とすると、現在の山下町あたりから横に張り出していた横長の浜(砂州)が横浜村で、開港前は80戸ほどの寒村だった。現在の370万人とは比べ物にならない。
開港後に埋め立てが行われたが、埋め立てしやすいように縦横が直角になった根本の山下町辺りから45度に埋めていった。これが横浜新田で、道路も斜めだった。一方、太田屋新田の埋め立てによって残った入江は全部埋め立てられ、大桟橋から入江の奥に向かって南北に道路が出来、現在の中華街の所で45度の道と交差するようになった。こうして出来たひし形の所に中華街が出来た。

突き当りが堀川。右側が中華街側で堀川の向こうが元町。
斜めに埋め立てられていった様子が伺える。

さて、ミステリーの中に先生のお勧めポイントの「幻の名所、元町百段の怪」が載っていた。実は幻の名所と言われるごとく現在元町百段は存在しない。関東大震災で崩壊してしまったからだ。中華街の朱雀門を出て堀川にかかる前田橋から、堀川を渡って元町通り、さらに元町通りと並行している元町仲通りに突き当たった所から百段の旧坂が始まっていた。実際は百一段だったが元町百段と呼ばれており、真っ直ぐ登ってゆくと浅間神社があった。百段は神社の参道で、かなりの急階段だった。そして、その階段の登り口に至る前田橋からの道がなぜか同じ道幅ではなく、先に行くほど狭まっていた。

絵の世界では遠近法(パースペクティブ)といい、3次元の世界を2次元の画用紙で立体感を出す透視図法(並行して続く道、線路、建物などは目の高さと同じレベルの一点(焦点)に集約される。)がある。この手法を応用して、道路から見ると実際よりも階段が迫って見えるようになっていたのだった。遠近法にはもう一つ、「遠くの景色は薄ぼんやりと、青味がかって見える。」という色彩による特性を使った空気遠近法がある。最も私が苦労している手法でもある。

元町仲通、現在の霧笛楼があるあたりから階段があったらしい。大きな木は百段公園にある木。

道路の幅が平行ではなく、先に行くほど狭まっていて実際よりも近く見える。

「元町百段は関東大震災で無くなってしまったけど、百段公園はありますよ。」と先生から伺って、『いつか行かなければ。』と心に引っかかっていた。8月のある日、元町商店街から見尻坂と貝殻坂が別れる手前を右に曲がって、堀内歯科医院の横の急な階段を上って行った。手にはiPadを持ちグーグルマップを頼りに。
かなりの急坂である。真夏の午後だったので余計にきつかった。階段を登り切ってホッとして、坂道を少し上がると廃墟のような空き地に「百段公園」の解説版があった。

堀内歯科クリニック横の階段を上る。

すぐに階段が右に曲がる。崖を横に上って行く形になるので傾斜は百段階段よりも緩やかなはずだがそれでも夏の暑さはこたえた。
山や神社などで男坂、女坂というのがあるが、百段階段が屈強な男階段ならこちらは女階段か。

百段公園にある元町百段の写真。

百段公園。ランドマークタワーが見える。
写真は全て2017年8月26日撮影。

雑草が生い茂っており公園というよりは廃墟に近い。ギリシャ神殿風の柱が余計に廃墟らしさを醸し出している。ただし見晴らしは抜群。
何とか一度行って見ようと思って来た場所だが、ここに立ってみると、1年くらい前にスケッチポイントを求めて汐汲坂の横を通って歩いている時に来た場所だった。その時は夕暮れ時で、公園とも思わず単なる空き地と思って引き返したので解説版にも気が付かなかった。『なんだ。そうだったのか。』という思いと『やっぱりそうだったのか。』という思いと両方だった。何となく位置的にそんな気がしてもいた。今回あらためて行って見ると、ツクツクボウシとミンミンゼミが競い合って鳴いていて、夏の終わりと秋の始まりを感じた。
写真を撮り直しに出かけた8月26日の事だった。このコースは8月に2回回ったことになる。

やぶ蚊が沢山いそうでスケッチをする気力もなく、百段公園を後にして坂を登り山手本通りの汐汲坂交差点に出た。山手通りをべーリック・ホール、エリスマン邸、えの木亭の前を通って山手234番館に入り、エリスマン邸横の額坂を下って「関東学院の源流 横浜パブパブテスト神学校発祥の地」に出た。地番は山手町75番地。
ここは「山手ストーリーを語る会」第1回(「ヨコハマNOW」⇒「横浜スタイル」より)の「ジョナサン・ゴーブル(1827~1896)」と「ネーサン・ブラウン(1807~1886)」がかつて住んだ場所である。そして語るのは現在の住人、山手東部町内会長斉藤秋造氏。
http://yokohama-now.jp/home/?p=15957
庭先で「ジェラール」の銘の入った西洋瓦の破片を見つけたことから、「この75番地に一体誰が住んでいたんだろうか」という興味を持ち、調べて行くと・・・。以下本文参照。

私はこういう展開が大好きである。ふと手にしたものから謎解きの様に数奇なストーリーが展開されて行き、好奇心をどんどん膨らませて行くこのワクワク感が。
何事にも好奇心とほんのちょっとのしつこさ、探求心が思いがけない展開を呼び起こすことになるようだ。

しばらく立ち止まってこの景色を眺めてから再び階段を下りて、元町公園の入り口を経て再び元町商店街に戻ったのは4時過ぎの頃。商店街の街路樹の葉が陽に当たって鮮やかに輝いていたので描いてみた。8月から念願かなって赤坂先生の教室に入れていただき、最初に覚えたのが樹木の、特に葉の描き方。この2枚に限らず8月はほとんど風景のパーツとしての樹木ばかり練習していたので作品と呼べるものはない。

そのためか手前の樹木を一生懸命描くあまり商店街がおろそかになったのは否めない。もう一枚描き直す時間がなかったので何卒ご容赦願いたい。お恥ずかしい絵であるが、風景画に樹木はつきもの。同じく、空、水、花、そして苦手の人物など、基本に返ってゼロから学び直し、身につけて行くしかない。全部が見について、全体のバランスが整って初めて作品となる。今はその一過程。

それにしてもこの街路樹の葉は不思議な葉だ。遠目には一枚の葉と思っていたものが細い糸の塊で出来ている。そんな感動が残る翌27日に津久井湖から道志道、御殿場を経て箱根に行った。沢山の樹木の葉を『あれはこう描いたらいいかな?』とか観察していると、色といい形といい、実に様々な違いに驚かされる。

参考資料

  1. 関内新聞 2017年6月17日 開港横浜の明治大正期の名勝史跡、元町百段の名残りを探してみた
    https://kannai.jp/hyakudan/
  2. 【横浜歴史画】元町百段 – THE YOKOHAMA STANDARD
    http://theyokohamastandard.jp/article-7241/

筆者紹介

Jun Ohsawa 大澤 淳さん  
お名前 Jun Ohsawa 大澤 淳
E-mail j-narumi@ug.netyou.jp
URL http://home.netyou.jp/kk/ohsawa/
成年月日 1967年1月15日成人式。おひつじ座。いわゆる団塊の世代。誕生日はもっと前。
年齢 その年の西暦 - 1947(3月25日以降)
生息地 横浜市鶴見区に70年弱在住。いわゆる浜っ子。
血液型 いわゆる典型的なAB型
性格 内気、控えめ(だが信念は曲げない)、人前に出るのを極度に嫌う・・・だったが、 最近は少しずつ変わって来た。これもネット化のおかげかな。
割りと簡単に物事をはじめてしまう。(衝動的、意思決定が速い、好奇心が強い)。
忘れやすい。(最近特に)
趣味 ◎絵画:(主に水彩画)初めは油彩だったが10年近く休止していた。ヨコハマNOWのお陰で、2015年より主に水彩画を中心に絵画を再開した。
◎文章を書くこと(エッセイ、旅行記など)。
◎放浪の旅:国外国内を問わず、スケッチポイントを求めて心の洗濯に。(すぐに汚れやすいので。)
〇ゴルフ:1979年にホールインワンをしたことも。42年間通った神奈川県津久井湖ゴルフ倶楽部を2016年12月に退会。ハンディキャップは全盛期13だったが。
〇2015年急に作曲を始めたが半年もたたずに現在休止状態。
●フォルクローレ(アンデス音楽):ケーナ、サンポーニャ等も演奏したが、今はたまに聴くだけ。フォルクローレ(アンデス音楽、ケーナ、サンポーニャ演奏・・・だったが、今は極たまに聴くだけ。

 

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